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グライドカムの話(出物シリーズ001)
DATE 2026/04/27
CATEGORY 技術
AUTHOR Akihiro Yashima
FRAME #003

グライドカムの話(出物シリーズ001)

グライドカムのサポートシステムをついに買った。

中学生の頃から「世界ふれあい街歩き」を見るたびに、あの浮遊感のある動き方に底知れぬ魅力を感じていた。それがスタビライザーという機材によるものだと知って、家にあった小さなminiDVカメラで、似たような映像が撮れないかと試行錯誤をするようになった。スタビライザーの原理はやじろべえであるらしい、といったなんとなくの理解で、カメラに一脚をくっ付けて、バランスするポイントを探って摘まんで持ったり、三脚のネジを緩めて左右の手を弛緩させた状態で持ってみたり、ビニール紐でカメラを何点かで吊ってぶら下げてみたりと、色々試した。

そして、あれこれ試した結果、これはなかなかマネできる機材ではなさそう、という事が分かったのだった。

当時、カメラの手ぶれ補正はそこまで精度の高いものではなく、だからこそ、ふれあい街歩きの滑るような映像は憧れだった。これを実現していたグライドカムとかステディカムといったブランドのスタビライザーは高嶺の花で、とても手の出せるようなものではなかった。

それからだいぶ時は経って、今から数年前のこと、現同僚の大草が、ついにグライドカムを買った、と自慢してきた。新品激安で出ており、買ったというのだ。大草は大の機材好きでフジヤカメラ常連でもあり、「中野からの帰路に手ぶらなし」と豪語するほどの丈夫ぶりを誇るが、彼も私と同じくスタビライザーに憧れを持っていて、ひょんと買ってしまったという。

「使ってええぞ」

「ごっつあんです」

しかし、今や電動ジンバル全盛期、グライドカムは、もう何世代も前の物となってしまっている。なにより、実際に持ってみなければ知りえなかったことではあるのだが、カメラの反対側に錘を付けてバランスを取るスタビライザーは、非常に重たい。しかも、グライドカムは片手でほぼその全重量を支えねばならない構造になっている。例えば、C100Mark2という、普段なら1時間くらい別に問題なく抱えて撮影できるカメラでも、これに載せると3分を超えて持っていることができない。ワンカットごとに細かく刻むことができるならば問題ないが、ドキュメンタリーのように長回しすることが前提の運用だと、この重量感はちょっと実用的ではない。

グライドカム練習。髙松曰く「人生で最も手首に重力を感じた日」

 

しかし、撮れる映像は素晴らしかった。セッティングと撮影にはコツの習得が必要で、既にこれのマスターになっている大草から習いつつ、練習を重ねる必要はあったものの、中学生の頃から憧れていた、宙に浮いているような映像がついに手元に来たのである。電動ジンバルももちろん凄いが、あの奇妙に心地よい浮遊感は、物理的にバランスしている自然現象からしか多分得られなくて、それはやはりこうしたスタビライザーの専売なのであろう。

ただ、繰り返しになるが、これをメインとして使うには、私には些か重すぎた。実用とするには、何かしらの工夫をせねばならない。

そして、4月のある土曜日。

大草から「出とる」と短い連絡が入った。単独撮影仕事の帰り、例によってフジヤカメラに寄った際に、グライドカムを支える、サポートシステムのベストとアームが出ていたのを、目ざとく見つけたというのだ。しかも2つも並んで売っているらしい。

自宅で昼寝を貪っていた私は、目をこすりながら「いくら?」と聞いた。私たちが中学生の当時、ベストとアームの販売価格は50万円を超えており、なんぼ中古でもなかなか手の出る値段ではないはずで…

「9000円と3000円」

!?

耳を疑うような話であった。

飛び起きて、カメラを準備しすぐ中野へ。この手の機材は、その特性上どうしても現物を確認しないとならない。

売れてしまうのではないかと気が気ではなくて、道中「まだありますか」とお店に電話したりした。

「まだございます。正直そこまで注目度の高い機材ではないので、大丈夫かと…」

それでも大急ぎで駆け込んだ。

憧れのベストとアームである。中学生の頃から夢にまで見ていた機材である。

我々は、グライドカムとカメラを持参し、店頭をお借りして散々試させて頂いて、結局どちらかに決めることができず、2つ購入した。

結論としては、すごい、の一言である。練習はもちろん必須ではあるが、肩と腰に重量を分散させることに、これほど効果があるとは思わなかった。

まず、全然重くない。

そして、それゆえに繊細な操作が可能だ。

これまでは、指でグライドカム全体の重量を支えつつ、方向や高さもどうにかコントロールする必要があったのに対し、アームとベストがその重量をしっかりと支えてくれるので、重さで指先を鬱血させずとも、敏感な感覚を維持した状態で操作できる。

そして、アームのスタビライズ性能にも感動した。体とカメラは、アームによって繋がっているはずなのに、全く別の生物のように、お互いの動きを伝えることなく挙動する。それでいて、カメラの重量を支えているのだ。

今後、このグライドカムは練習や検証を重ね、実際の撮影にも随時投入していく予定である。私たちは新鋭の電動ジンバルも使っているし、あるいはジンバル無しの手持ち撮影にも自信を持っているが、それらと比較してみても、グライドカムの映像にしか出せない味わいは確実にあると断言できる。

是非とも多くの機会で活用し、皆様にこの独特の映像を届けていければと思っている。

ご依頼でグライドカムをご希望される場合は、その旨、お問い合わせの際にお申し付け頂けましたら幸いです。